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トップ特別レポート2012年後半の株式市場展望

2012年05月09日(水曜日) 14時40分 更新

2012年後半の株式市場展望

2012年の日本経済が好調と考えていた要因は二つです。前半は東日本大震災の復興対策で、後半は海外景気の持ち直しで輸出中心に景気が回復するという見方です。

確かに、第一四半期を見ますと米国景気の復調と中国などの新興工業国の景気回復期待がありましたので、前半の景気対策、後半の輸出による景気上昇の可能性はありました。

では、2012年半ばに近づいた5月9日の時点での環境は、年初の環境と変わっていないのか?

★中国

中国は2012年のGDPを上方修正しましたが、その数値は小幅であり、中国が世界景気を引っ張れる規模にはなりません。逆に欧州輸出のダメージを抑える事が目的であり、GDPを10%以上浮揚させようという意識は治雄ごく首脳の間にはないように思われます。つまり、欧州危機によって輸出主導の経済成長は厳しくなったとして「内需型経済成長」に転換しようという考え方のようです。従って、中国が世界景気を引っ張るのは「少なくても、今年ではない」と思います。

★米国

米国景気の見方は専門家の間でも完全に分かれてきたように思われます。米国景気は回復過程に入ったと見る専門家と、これから本格的なリセッションの危機まであるという見方の専門家に分かれています。つまり、専門家がいろいろなデータを分析し、聞き取り調査をしているにも関わらず、180度違う結論になっています。

原因は欧州危機の影響をどう見るかです。楽天的な専門家は「欧州危機による米国景気の悪影響は、起こってから考えればよい」と思っているようであり、欧州危機が起こらなければインフレ懸念が米国景気に悪影響を与えるので「当面は欧州危機よりもインフレ阻止に重点を置くべきだ」と考えているようです。


FRBの理事の間でも、連銀総裁のなかには「利上げが近い」と言って、米国景気が過熱する前に金融緩和政策についての出口政策に入るべきだという意見を言っている人もいます。逆に、バーナンキ議長は「欧州危機を重要視しています」ので、利下げを継続すべきだと言っています。

米国の失業率が改善しているのは「職探しを諦めた人達」が沢山出てきたことで「分母が減った」ことが原因と言われています。つまり、失業問題は解決の方向に向かっているのではなく、就職をあきらめた人が増えてきていることで失業率が改善しているのです。普通に考えても欧州危機があるのに「企業が人員増をするということは考えづらく、リスクに備えたリストラを考えている」と見るのが普通です。

また、もう一つの問題である住宅不況についても、失業率が改善せず、欧州危機懸念から銀行も融資基準を緩和できないとすれば「住宅市場が回復する」というイメージは描きづらいといえます。何より、米国景気は1982年から成長を続けていますので、好景気は30年続いていることになります。つまり、景気波動から見ても、そろそろ米国景気は本格的なリセッションに入っても不思議ではないということになります。

したがって、米国には今年の世界景気を引っ張る能力はないかもしれません。

★欧州

前回の欧州危機は根本から対策を立てて解決するという方法ではなく、問題が起こったら対処するという「その場凌ぎ」の方法を取ってきましたので、欧州危機は終わったのではなく、単にギリシャのデフォルトを回避しただけであり、財政赤字をかかえた国々は財政再建によって景気はさらに悪化しています。

したがって、現在は第二次危機に向けた準備段階と何度か書きましたが、第二段階は経済的な危機だけではなく、選挙によって勢力図が変わったために政治的な危機も加わってきましたので、第二次欧州危機は第一次欧州危機よりも対応が難しくなり、長引くことになるのではないかと思います。

長引くということは「株式市場に色々なタイミングで何回も好悪材料を提供する」事になりますから、投資家にとっては「動かない株式市場に比べて、投資チャンスが増える」ということになります。

ただし、転換点投資ではなく、自分の相場感で投資する人にとっては、高値で買って負け、安値で売って負けというダブルパンチを喰う確率も高くなりますので、このような不安定な相場の場合には「焦って売買回数を増やす」という投資方法ではなく、慎重に転換点を探すという投資方法の方が安全でリターンも高くなるのではないかと思います。それでも、何も無い相場に比べれば売買回数は増えると思います。

★日本

今年前半の日本経済は景気対策効果によって堅調な動きとなりました。しかし、後半の輸出主導による景気回復というシナリオは、上記のように「輸出先の景気が回復する」見通しが狂い始めていることから、後半戦の景気回復による株式市場の上昇という要因には黄信号がともり始めたかもしれません。

レストランでも、超高級レストランは閑古鳥が鳴いていて、安いレストランは盛況という東京の現実からも「後半戦に個人消費が盛り上がる」可能性は低いのではないかと思います。つまり、今年後半の景気後押し要因が消えだしたかもしれません。

★為替

米国景気が良くなれば「利上げによるドル買いで円安」になります。逆に米国景気が悪くなれば金融緩和によるドル売りで円高が進むことになります。したがって、対ドルでの円相場は米国経済次第ということになります。

欧州危機が本格化しますとユーロは急落する可能性が高くなります。欧州危機に対してユーロが大きく下落することは「欧州経済にとってはプラス要因」になりますので、ユーロ安円高・ドル高は欧州にとってはプラス、日米にとってはマイナス要因になります。そして、ユーロが下落する可能性は非常に高くなってきていますので、欧州向け輸出比率の高い日本企業は厳しい状態に追い込まれると思います。

★外国人投資家動向

日本の株式市場にとってのプラス要因は外国人投資家動向です。欧米の株式市場のパフォーマンスが落ちてきますと、コストのかかっている資金を運用する金融機関やヘッジファンド・投資信託は、欧米の株式市場を売って、パフォーマンスの良い市場に資金をシフトしてきます。

ただし、世界の巨額の投資資金を吸収できる規模の市場は日本市場と中国しかありませんが、中国はいろいろな規制がありますので、消去法で20年間も低迷している割安な日本市場に世界の投資資金が資金をシフトするという可能性は高いのではないかと思います。つまり、外国人投資家が買うから日本の株式市場が上がるという相場展開が期待できます。
そして、株式市場が上昇しますと「キャピタルゲイン=株式売却益」によって個人投資家の懐が膨らみます。投資家の懐が膨らみ、さらに「これからも株式投資で儲かる」という気持ちになりますと、株式投資で儲けたお金を抵抗感なく使うことになります。

また、株式市場が上昇し投資家が儲かりますと、税収増というプラス要因も出てきます。クリントン大統領が巨額の財政赤字を解消できたのが、企業の法人税収入と投資家のキャピタルゲイン税によってでしたので、キャピタルゲイン税の増加によって日本の財政赤字が改善するということも考えられます。

★結論

昨年から今年の最初の四半期までは「2012年の株式市場は上昇する」と考えていました。大手金融機関のチーフストラテジストは先週のテレビ解説で、今年後半戦からの株式市場の上昇を解説していましたので、専門家の間では「まだ、予想の修正をしていない」のではないかと思います。

しかし、上記で申し上げましたように、株式市場をとりまく環境は変化してきており、当初申し上げたような「日本の株式市場は強気でよい」という考え方を修正する必要が出来たのではないかと思います。

間もなく、イラン制裁問題も出てきますし、予想よりも早く欧州危機が再来して来ましたし、直近の米国の景気指標もまだら模様になってきましたので、今後の株式市場を取り巻く環境の分析は「頻繁に再分析しなかればならない」と思っています。頻繁に分析する理由は以下のような日本株式市場の上昇要因があるからです。

★世界の景気が悪化し、一旦は世界同時株安が起こる可能性は高くなってきました。その時には日本の株式市場も当然下がることになります。問題は、世界同時株安が起こった後の世界の株式市場の動向です。

欧州の株式市場は欧州経済のリセッションなどによって下落し続ける可能性が高くなります。そうなりますと、世界の巨額の資金を受け入れることができる市場は日本と米国になります。

つまり、世界の投資資金が日本を選ぶのか、それとも米国を選ぶのかによって「日本の景気と日本の株式市場の動向が決まる」ことになります。米国の株式市場は1982年から30年間上昇し続けていますので「割高」であり、梯子を外されたときの評価損は非常に大きくなります。

日本の場合は歴史的な安値圏にありますので、米国のようにはしごを外されたときの評価損を考える必要がありません。1990年代後半に、日本は5年も6年も下がり続け、米国はずっと上がり続けたというときに、割安な日本株を買った専門家は首になり、割高な米国株を買った専門家はアカプルコに別荘を買って、30億前後の資金を持って、30代で引退したということがありましたので、世界の専門家が日本を選ぶか米国を選ぶかは分かりません。

しかし、前回は5〜6年の割安、今回は20年の割安であり、しかも2012年1−3月期のパフォーマンスは日本が一番だったということを考えますと、世界の投資の専門家が日本市場を選ぶ確率は高くなったと思います。

世界の著名な投資家であるウォーレンバフェット氏は直近の講演で「13000ドルのNYダウは、歴史的に見ても絶好の買い場である」と言いました。30年も景気と株式市場が上昇している米国を割安と認定するバフェット氏の考え方は納得できませんが、それでも世界の投資家に大きな影響を与えるバフェット氏が米国株を推奨しているという事実は覚えておかなければならないと思います。

もし、世界の投資資金が日本市場を選んだ場合、時価総額シェアは20年で1/3になってしまった日本市場ですから、想像を絶する資金が日本市場に流入することになります。巨額の投資資金が日本市場に流入し、外国人投資家が日本市場を上げ続ければ、前述しましたように日本経済も税収も良くなります。

したがって、欧州危機による世界同時株安の後の外国人投資家動向次第では「日本市場が暴騰する」というシナリオも考えられます。この場合、外国人投資家は長期で買い続けますので、日本市場が5年、10年と上がり続けるというシナリオも出てきます。

いずれにしましても、現時点では好悪材料が混在していますので、先ほど申し上げましたように「頻繁に分析する」必要があるということになります。

★モルガンスタンレーが発表しているワールドインデックスによりますと、
1)1988年の世界の株式市場の組み入れ比率は「日本が44.2%で1位」「米国が29.1%で2位」「英国が8%で3位」という結果でした。

2)2012年1月のモルガンスタンレーのワールドインデックスによりますと「米国が52.4%で1位」「英国が9.7%で2位」「日本が9.1%で3位」という結果になっています。日本は23年間で44.2%から9.1%まで組み入れ比率が激減していることになります。つまり、日本の組み入れ比率は1/5にまで減少しています。今後、日本の組み入れ比率が上がって、米国の組み入れ比率が下がるということになりますと「米国から日本への投資資金の大移動が起こる」ということになります。

★世界の主要市場の時価総額推移を見ますと、
1)1990年末では「米国が33.8%で1位」「日本は32.9%とほぼ米国と同じで2位」「ヨーロッパ全体が18.7%で3位」となっています。

2)2011年末では「米国が31.0%で1位」「欧州が19.4%で2位」「中国が7.2%で3位」「日本は6.6%で4位」「インドが4.9%で5位」となっています。日本は中国に負けてしまっていますし、1/5にまで減少してしまっています。

レポート担当:ケンミレ株式情報 森田 謙一


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