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時事戦略レポート

2008年01月09日(水曜日) 16時01分 更新

日経平均ノックイン価格に近づいたことによる相場波乱要因とは?

株価急落によって日経平均ノックイン債に絡んだ先物売りが出るとの思惑が、投資家の間で広がっています。1月8日付けの日本経済新聞マーケット総合面に、『ノックインに警戒感』という記事が出ていましたから、ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。

日経平均ノックイン債の「ノックイン」とは、「ノックイン条項がついたリスク限定型ファンド」といわれる金融商品で、日経平均株価が一定価格(ノックイン価格)を下回ることを指します。

そして、日経平均の14200円から14300円程度に「ノックイン条項」が設定されているものが多いことから、この水準に達したことで日経先物売りによる一段の下落が考えられていることになります。

では、なぜノックインすることで日経先物に売りが出るのかということになるのですが、その前に日経平均ノックイン債の仕組みを知る必要があります。

日経平均ノックイン債を簡単にいえば、買ってから一定期間の間に、日経平均が2〜3割以上下がらなければ、3〜4%程度の利息を支払います、というよう条件がついた投資信託の一種です。商品によって条件が異なるわけですが、買った人は一定以上の下落がない、つまりノックインしなければ、高い運用利回りを受け取れるということになります。

しかし、期間内にノックインしますと、元本が保証されずに日経平均に連動する投資信託になってしまいます。つまり、日経平均ノックイン債購入者は、元本が値下がりした株式ファンドになるということです。

どうして高い利回りがもらえるのかといえば、実は日経平均オプションなどのデリバティブを組み合わせた商品で、日経平均ノックイン債購入者は、日経平均のプットオプションを売ってオプション料(プレミアム)で利回りを受け取る仕組みになっています

オプションについて簡単に説明しますと、オプションとは買ったり売ったりする権利のことで、オプションの売買は権利を売買することです。コールとプットがあり、コールが買う権利、プットが売る権利です。

たとえば、日経平均15000円のコールオプションを買うとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利を持っているということになります。

今の日経平均が10000円であろうと20000円であろうと15000円で買う権利を持っているわけです。もし日経平均が20000円になったとすれば、15000円で日経平均を買うことができる権利は魅力がでます。

オプション1単位で日経平均を1つ買える権利だとすると、日経平均が20000円のとき、15000円で買う権利であるオプションは、単純に5000円の価値があるといえます。なぜなら、5000円支払って日経平均を15000円で買って、時価の20000円で売ればトントンだからです。

日経平均が10000円に下がってしまったらどうでしょうか。時価が10000円ではだれも15000円支払って日経平均を買おうとは思わないはずです。ただし、オプションは権利ですので、日経平均15000円のコールオプションを買った投資家は権利を使わなくてもよいのです。

そうなると、上がったときだけ利益がもらえるので、誰でも勝てる夢のような金融商品となってしまいます。そんなに甘いことはなく、上がったときだけ利益がもらえる権利の対価としてオプション料(プレミアム)が発生します。

つまり、オプションを買った投資家は、権利行使しなければオプション料(プレミアム)以上の損はしないとなります。したがって、オプションを買うということは権利を買うことで、損失は支払った金額に限定されます。

反対にオプションを売るということは、権利に応じるということになるのでオプション料(プレミアム)を受け取る側になるということです。

たとえば、前述の反対に日経平均15000円のコールオプションを売るとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利に応じるということですから、もし20000円になったら、5000円支払わなくてはいけません。しかし、15000円以下であればもらったオプション料(プレミアム)が儲かることになります。

日経平均ノックイン債購入者は、このオプションのプット(下がると利益になる権利)を『売って』います。つまり、一定の価格まで下がらなければ、オプション料(プレミアム)がもらえるので。これが利回りになるということです。

このように、オプションの売りポジションを取っているといえますから、一定価格を下回る(ノックイン)とポジションの損失が拡大することになります。そうなると証券会社などの運用者は、日経先物を売るなどのヘッジ(損失回避のための保険)が必要になって、株式市場の下落につながることになります。

そして、ヘッジファンドなどの投機筋がノックインによって出る先物の売りを見越して仕掛け売りを行う思惑が出てくるので、相場波乱の要因になっているということになります。

下値不安をあおるような材料ですが、同じようなことが2006年の6月頃にも起きています。当時の株式市場が急落した背景には、高水準の信用買い残や裁定買い残の解消が指摘されていましたが、それに加えてノックイン価格に近づいたことが相場波乱要因として指摘されました。

そしてご存知のように、2006年の急落局面は6月で底を打ってから反発しています。現在のノックインによって先物売りが大量に出るということも、一部では売り方の材料にされているとの指摘が見られています。

また、今週末は1月オプションの権利行使最終日ですので、思惑が先行しやすいとも考えられます。行き過ぎた下げ相場になりますと、メディアは悲観的な話を取り上げやすくなりますが、下がっているときに下がりそうな話をした方が受けますし、真実味が出るからだと思います。したがって、悲観的な話ばかりが目に付いてきますと、相場が底を打つことも多いのではないかと思います。

ただし、このことは上昇の時にもいえますから、株式市場が高値で明るい見通しが出揃っていても、過信はしない方が無難です。投資家が強気か弱気に大きく傾いたときに、相場は反転するのだと思います。

レポート担当 市原義明


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